じーん栄養講座

【食べる理由セミナー1】代謝の基礎知識

食べるべき理由 ― 代謝の基礎

こんにちは。
今回は「なぜ人は食べなければならないのか」というテーマで、
代謝の維持という観点からお話ししていきます。

内容は少し多いですが、できるだけテンポよくまとめています。
今回扱う主なテーマは、以下の6つです。

  • 代謝の維持
  • ホルモンバランス
  • 認知機能(脳)
  • 筋肉・骨
  • 免疫機能
  • 持続可能性

まずは、代謝の基礎から見ていきましょう。


基礎代謝(BMR)とは何か

基礎代謝、いわゆる BMR(Basal Metabolic Rate) とは、
安静にしている状態で、生命を維持するために必要な最小限のエネルギー消費量 のことです。

具体的には、

  • 寝ているだけ
  • 呼吸をする
  • 心臓を動かす
  • 体温を保つ
  • 細胞を修復する

こういった「何もしていないように見える状態」でも、体は24時間働き続けています。
実は、1日の総消費カロリーの約60〜70%は基礎代謝が占めています

つまり、
「運動で消費しているカロリー」よりも
「何もしなくても消費されているカロリー」の方が圧倒的に多い、ということです。


基礎代謝を決める要因

基礎代謝を左右する最大の要因は、除脂肪体重(主に筋肉量)です。

ムキムキになる必要はありませんが、
筋肉量が多いほど基礎代謝は高くなります。

そのほかにも、

  • 甲状腺機能
  • 年齢
  • 性別

などが影響します。

一般的に、基礎代謝は加齢とともに年に約1%ずつ低下すると言われていますし、
男性の方が女性よりやや高い傾向があります。

それでも、基礎代謝を保つことが、健康的で整った体を作る土台になります。


脳と内臓はエネルギーを大量に使う

体重のわずか約2%しかない脳ですが、
基礎代謝全体の約20%を消費しています。

さらに、肝臓・腎臓・心臓などの臓器は、
筋肉の10〜40倍もの代謝活性を持つと言われています。

つまり、
エネルギーが不足すると、真っ先に影響を受けるのは脳や内臓です。

脳機能を維持するためには、
血糖を安定させ、エネルギー不足にしないことが非常に重要になります。


エネルギー不足で起こる「代謝適応」

カロリー制限が続くと、体はそれを「飢餓状態」と判断します。
すると、生存のための防御反応として「代謝適応」が起こります。

これは意志で止められるものではなく、体の自動反応です。

代謝適応で起こる主な変化は、

  • 筋肉量の低下
  • 肝機能の低下
  • 基礎代謝の低下

結果として、
痩せにくく、消費しにくい体になってしまいます。

研究によると、
体重が1kg減るごとに、基礎代謝は1日あたり20〜30kcal低下すると言われています。
この代謝低下は、1年以上続くこともあるとされています。


代謝適応の仕組み

代謝適応の背景には、いくつかの生理的変化があります。

甲状腺ホルモンの低下

  • 活性型ホルモン(T3)が減少
  • 基礎代謝や熱産生が低下

ミトコンドリアの効率化

  • 少ないエネルギーで働くようになる
  • 「燃費は良いが、総消費は低い」状態になる

レプチンの低下

  • 満腹ホルモンが減少
  • 食欲が増進しやすくなる

交感神経活動の抑制

  • 活動量が自然と低下

これらはすべて、
体が「エネルギーを節約しなければ」と判断した結果です。


甲状腺ホルモンと代謝の関係

甲状腺では、T4(サイロキシン)というホルモンが分泌され、
体内で活性型の T3 に変換されます。

T3の主な働きは、

  • 基礎代謝の向上
  • 熱産生の促進
  • ATP合成の調整
  • 体温の維持

しかし、低エネルギー状態が続くと、
T4→T3への変換が低下します。

その結果、

  • 基礎代謝が下がる
  • 消費カロリーが減る
  • 痩せにくくなる

という悪循環に陥ります。

逆に、十分なエネルギーと栄養があれば、肝臓でのT3変換は正常に保たれます


レプチンとリバウンドの仕組み

レプチンは脂肪細胞から分泌される満腹ホルモンで、
体脂肪量に応じて分泌されます。

体重が減少すると、
レプチン濃度は50〜70%も低下することがあると言われています。

すると、

  • 食欲を増やす神経(NPY・AgRP)が活性化
  • 食欲を抑える神経(POMC)が抑制

結果として、強い食欲とリバウンド圧が生じます。

これが、
急激な体重減少後にリバウンドしやすい理由の一つです。


極端な制限がダメな理由

例えば、

  • 体重60kg
  • 摂取カロリー1200kcal

といった状態は、
減量ではなく、代謝破綻の状態です。

段階的な減量であれば、

  • 総消費の10%未満
  • 例:2500kcal → 2400kcal

といった調整が必要になります。


NEAT(非運動性熱産生)の低下

NEATとは

  • 立つ
  • 座る
  • 歩く
  • 身振り手振り
  • 家事や仕事中の動き

といった、無意識のエネルギー消費のことです。

NEATは、総消費エネルギーの15〜30%を占めると言われています。

しかし、摂取カロリーが減ると、
無意識のうちに動かなくなり、
NEATが低下します。

これが長期化すると、
代謝低下がさらに進行します。


ミトコンドリアと代謝

ミトコンドリアは「細胞のエネルギー工場」と呼ばれ、
食事から得た栄養をATPに変換します。

栄養不足が続くと、

  • ミトコンドリアは効率化
  • 熱産生が低下
  • 総消費エネルギーが減少

します。

さらに、

  • マグネシウム
  • ビタミンB群

などの不足は、
ミトコンドリア機能をさらに低下させます。


褐色脂肪組織と熱産生

褐色脂肪組織は、
脂肪を直接「熱」に変える特殊な組織です。

寒冷刺激(16℃以下)で活性化し、
冬季は最大で40%ほど活動が増えるとも言われています。

しかし、慢性的な低エネルギー状態では、
褐色脂肪の機能も低下します。

回復には、
数週間〜数か月かかる場合もあるとされています。


代謝回復の基本戦略

代謝を回復させるために重要なのは、

  • 段階的なカロリー増加
  • 十分な栄養摂取

目安としては、
週に100〜200kcalずつ増やす方法が紹介されていますが、
これは個人差が大きいため絶対ではありません。

また、タンパク質は重要ですが、
過度な高タンパクは推奨されません

目安は、
体重1kgあたり約1g

体重50kgなら、
1日50g程度が一つの基準になります。


まとめ

食べないことで起こるのは、

  • 代謝の低下
  • ホルモンの乱れ
  • 食欲の暴走
  • リバウンド
  • 回復に時間がかかる体

という現実です。

食べることは、怠けでも甘えでもなく、体を守る行為です。
代謝は「削る」ものではなく、「育てて維持する」もの。

この前提を、ぜひ忘れないでください。